2026.08.28
旅館・ホテルの稼働率の上げ方——稼働率より先に見るべき3つの数字
「稼働率を上げたい」——宿泊施設からいちばん多くいただく相談です。ただ、実務でデータを見ると、その多くは稼働率の問題ではありません。稼働率だけを目標にすると、答えは必ず「値下げ」に行き着きます。安く売れば部屋は埋まりますが、清掃・リネン・アメニティの変動費は増え、手元に残る利益はむしろ減ることさえあります。
稼働率は「結果」の数字です。上げるべきは結果ではなく、その手前にある売り方です。この記事では、稼働率より先に見るべき3つの数字を紹介します。
数字1:RevPAR(販売可能な1室あたりの売上)
RevPARは「宿泊売上 ÷ 販売可能客室数」で計算します。稼働率と客室単価を同時に評価できるため、「安売りで埋めた満室」と「高く売れた8割稼働」を正しく比較できます。稼働率90%でも単価が2割下がっていれば、RevPARは悪化しています。
まず直近12か月のRevPARを月別に並べてください。稼働率が低い月ではなく、RevPARが低い月が本当のてこ入れ対象です。
数字2:曜日別・日別の埋まり方
月単位の稼働率は、問題を平均でならして隠します。同じ稼働70%でも、「土曜は常に満室・平日がゼロに近い」宿と「毎日まんべんなく7割」の宿では、打ち手が正反対です。
- 土日が早く満室になる宿——土曜の料金が安すぎます。上げるべきは平日の集客より先に、土曜の単価です
- 平日が空く宿——ビジネス・連泊・ワーケーションなど、平日に来られる客層向けの商品が足りていません
- 特定の季節だけ突出して埋まる宿——繁忙期の値付けが甘いまま放置されている可能性が高いです
特に注意すべきは「早く埋まる日」です。販売開始からすぐ売り切れる日は、市場がつけた値段より安く売っている日です。満室は喜ぶ結果ではなく、値付けを検証する合図です。
数字3:販売単価の分布(どのプランで・いくらで売れたか)
平均単価だけでは、商品の問題は見えません。予約明細を「どのプランが・どの販路で・いくらで売れたか」まで分解すると、最安プランばかりが売れて中位・上位のプランがほぼ動いていない宿が非常に多くあります。これは需要の問題ではなく、プラン設計の問題です。価格差に見合う内容の差が伝わっていないか、そもそも選ばれる理由のあるプランが存在していないかのどちらかです。
3つの数字が揃ってから、稼働率は上げる
RevPARで「どの月が問題か」、曜日別で「どの日が問題か」、単価分布で「どの商品が問題か」が分かれば、稼働率の上げ方は自然に決まります。埋まる日は上げ、空く日は商品を作り、売れないプランは作り直す——この順番で手を入れれば、稼働率は単価を落とさずに付いてきます。
逆に、この分析を飛ばして「とにかく埋める」施策から入ると、安売りの常連客が定着し、後から単価を戻すのが難しくなります。稼働率は最後に付いてくる数字だと考えてください。
日々の需要判定と値付けの運用については、レベニューマネジメント入門で詳しく解説しています。
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